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第4回公開講座 姫路キャンパス

2016-12-14
平成28年12月14日(水)  姫路キャンパス第4回公開講座では、長谷川貴士教授*が『大衆社会のゆくえ~オ ルテガの思想を手がかりにして~』と題し、講演されました。  ホセ・オルテガ・イ・ガセット(José Ortega y Gasset , 1883-1955)はスペイ ンの哲学者です。彼は『大衆の反逆(La rebelión de las masas)』(1930年)とい う本を著したことで世界的に有名になりました。この著作は、大衆社会の担い手「大 衆人」の教養の無さ、社会性の弱さが生み出す社会問題に焦点を当てています。経済 力を高め、社会的権力を得た大衆の消費行動が自己疎外を引き起こし、人間らしい生 き方、教養ある生き方を見失っても、失ったものすら気づかない「大衆人」の姿を批 判していると一般に理解されています。  20世紀に先進工業国で形成された大衆社会は、都市労働者が、収入の向上による所 得格差の縮小から、社会・文化活動を担う重要な中流階層の人々として登場したこと を意味します。低所得・低教育の人々が努力して社会の中で重要な地位を占めるよう になると、いわゆる成金趣味的な生活様式になり勝ちです。この点を否定的に捉えた 思想家の代表がオルテガです。一方で、中流層を重視する別の思想家は、大衆の貪欲 な消費活動こそ社会変革の重要な力になると考えました。その後、大衆社会の問題は 様々な立場の思想家が議論しています。その中で共通して主張されているのは、大衆 の生活は、物質的な豊かさから満足感を得ようとするため、人間性の向上や心のあり 方を深化させたり、親密な人間関係を構築したりするにはマイナスだということです。 さらに、経済的に発展し大衆の多くが物質的な豊かさを享受するようになると、生き 方や心の問題を重視する方向に人々の心情が変化するとも考えられました。  講義の最後は、現在の国際関係に係わる話でした。自分の生活を脅かすような社会 の変化を「危機」と感じる大衆人は、物事を客観的に見ることができず、「自分さえ 良ければ良い」として過激な排他主義になりやすいということです。特に欧米を見る と、「ゲルマン民族の大移動」(難民の流入)がローマ帝国を崩壊させ、ローマ人の 心情を自己中心的で排他的な方向に向かわせたことと、今日の中東からの難民流入に よる欧州連合(EU)崩壊の危機が歴史的に似ているということでした。現在の欧州人 の心情は、自らが生み出した人権や自由・平等の思想を捨て排他主義に向かうのでしょ うか。また、グローバル化と不法移民流入によるアメリカ合衆国の政治的変質も同様 の可能性が高いことが示されました。これは、今進みつつある日本での外国人労働者 受け容れの問題を考える良い機会にもなりました。  講演終了後、「難しかったけれども、面白い話でした」、「トランプ大統領のアメ リカや難民問題で混乱するヨーロッパ連合の現状を大きな歴史の流れから理解できた」 などの意見が寄せられました。  本年度の姫路キャンパスの公開講座は今回で終了となります。ご参加いただきまし たみなさまに感謝申し上げます。ありがとうございました。  また、神戸三宮サテライトキャンパスでは、2017(平成29)年も引き続き公開講座 が開講されます。詳しくは、こちらからご確認ください。 http://www.kinwu.ac.jp/volucen/kokaikoza_kobe.html?pid=23894 *ペンネームは、「長谷川高主」。