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2021年度 公開講座 ベルトレスリング~民族格闘技の世界~(下)

前回は、ルールの説明を中心にベルトレスリングという競技についてお話をしました(前回記事)。今回は、実際の大会の様子や今後の活動についてお話ししていきたいと思います。

――ベルトレスリングとの出会い(はじめたきっかけ)は?

 私がベルトレスリングを始めたのは、2017年に国内で開催された大会に参加したことがきっかけです。私は高校からレスリングを始めたのですが、レスリングを始めた動機としては「格闘技をしてみたい」という強い興味を持っていたことであり、ベルトレスリングという競技をはじめて知った時も純粋に「ベルトレスリングとは何だ、やってみたい」という気持ちがありました。そこでひとまず実際に体験してみようということで、国内で行われていた大会に参加をしました。その大会にはレスリング経験のある選手のほか、柔道を専門とする選手や総合格闘技をしている選手など、様々な競技経験を持つ選手が参加しており、異種格闘技戦といった印象を受けました。試合の結果、国際大会の代表に選出していただくことになり、定期的にベルトレスリングの練習を始めたことから、それ以降の国内で行われるベルトレスリングの大会には参加をしています。

――国際大会の様子は?

 大会の雰囲気は、開催地や開催規模などによって様々です。都市部で開催されることもあれば、自然豊かな場所で開催されることもあります。現地の雰囲気なども遠征の楽しみのひとつです。また、ベルトレスリングは体重階級制競技であり、国際大会規模の試合になると前日に計量が行われます。試合に向けて減量を行っている選手も多く、計量直前の選手たちには独特の雰囲気が漂っています。現在、階級は55kg・60kg・70kg・80kg・90kg・100kg・+100 kgとなっていますが、大会によっては実施されない階級などもあります。

写真1 試合が行われる競技場

――競技を通じた世界の人たちとの交流は?

 国際大会では競技会場の内外にかかわらず、いろいろなところで交流があります。ベルトレスリングは普及を進めている段階の競技ですので、参加選手が少数である国も少なくありません。そのような国の選手は、練習やウォーミングアップの相手がいないということがあるため、他国の選手と行うこともあります。その際、お互いに言葉が通じない場合もありますが、ジェスチャーなどを使いながらコミュニケーションを図り、また、試合前にケガをしたり、させたりするといけないため、目には見えない気遣いなども感じることができます。
 競技会場の外では選手村や宿舎などが交流の場となります。昨年、開催された東京オリンピック・パラリンピックでも話題になりましたが、2017年に開催された大会では、ピントレーディングが行われていました。ピントレーディングとは、自国の国旗や特徴のあるピンバッジを他国の選手と交換し合うというオリンピック発祥のイベントのことなのですが、おしゃれなピンであったり、好きな選手の国のピンであったりと、自分のほしいピンを持っている人に声を掛け、交流を図るということが行われていました(写真2)。また、ある時には私の名前があるマンガの主人公と同じであるということから、海外の選手に話しかけられるといったこともありました。そのことは日本のマンガやアニメといったポップカルチャーの人気について改めて実感する機会となりました。
 選手との交流はもちろんですが、大会スタッフや現地の方との交流もあります。大会期間中は、スケジュールや進行状況などの確認のため、大会スタッフとやり取りをすることがあるのですが、何度もやり取りをするうちに打ち解け、大会期間中に誕生日を迎えたスタッフの簡易的な誕生日パーティに参加させてもらったこともあります(笑)。

写真2 各国のピンバッジと大会時のID(身分証)

――思い出に残っているエピソードなどは?

 競技からは離れてしまいますが、遠征時に起こったハプニングや予期せぬ出来事などは思い出に残っています。ある大会では、他国の選手と大会期間中のホテルの部屋が一緒ということがありました。私の中では、同じ国の選手は同じ国の選手同士で同じ部屋に滞在するという先入観があったのですが、その大会では、日本の選手団は1人ずつ分かれて、それぞれが他国の選手と同じ部屋で起居を共にするということになりました。私はチリ、パナマ、メキシコといった国の選手と同じ部屋でした。年齢が上で、体重も100kgを超えるような選手たちだったので、初めのうちは少し不安でしたが、話をしてみると気さくな方ばかりで大会期間中は仲良く過ごすことができました。
 別の遠征時にある国の選手が自身の境遇について話してくれたことも思い出に残っています。その選手は18歳で、「自分の国では内戦が起こっており、思うように国内外を移動することができないが、大会がある時には国外へ出ることができ、他国の人と交流ができる」といったことを話してくれました。このような話を実際に当事者から聞くということがそれまでなかったため、選手を取り巻く環境や世界情勢について考えるきっかけとなりました。この選手は、先に出た日本のマンガが好きという選手であり、「マンガから勇気をもらうことができる」とも言っていました。
 これらの出来事以外にも思い出に残る出来事はたくさんあるのですが、すべての出来事が良い経験となっています。

――これからの活動について

 日本国内においてベルトレスリングは、まだまだ競技人口が少ないため、まずは多くの人に知ってもらい、体験をしてもらいたいと思っています。その第一歩として学内にベルトレスリングにも取り組むクラブを立ち上げました(関連記事)。このクラブでは、ベルトレスリングをやったことのない・聞いたことのない学生でも気軽に始められるような環境を提供したいと思っています。また、将来的には地域の方々にも体験してもらえるような機会を提供できればと考えています。さらに、ベルトレスリングをはじめとする民族格闘技には、まだ日本で知られていない競技が数多く存在するため、今後は実践に加え、調査もしていきたいと思っています。まだ日本で知られていない民族格闘技を見つけ、取り組み、その国や地域、民族について理解を深めていく。そのような関わり方も民族格闘技の楽しみ方の一つだと思います。

写真3 競技で使用するジャケットとベルト

以上、2回にわたり、ベルトレスリングという競技についてお話をしてきました。ベルトレスリングは民族格闘技の一種であり、力くらべや取っ組み合いといった伝統的な遊びがルーツであるため、競技未経験であっても子どもから大人まで、幅広い世代の方々に気軽に楽しんでもらえるスポーツだと思います。皆さんも是非一度やってみませんか?

健康スポーツコミュニケーション学科
講師 黒崎辰馬(くろさき たつま)

次回は、4月1日(金)に更新をします。
担当は、健康スポーツコミュニケーション学科 講師の久野峻幸(ひさの たかゆき)先生です。
どうぞお楽しみに

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